3-1.土木事業の流れと土木地質の果たす役割

13 岩盤の工学的評価と岩盤区分

 前項までで岩盤の工学的評価にかかわる基礎的な事項,即ち岩盤としての強度,変形牲,風化と透水性について述べてきました。
 岩盤を対象として土木工事や設計を行うとき,これ等の要件を集約して,岩盤の土木的な特性をとらえやすい評価基準を作成しておくことが必要となってきます。
 この様な要請で生まれたのが岩盤区分(岩盤分額,岩盤等級等とも呼ばれています)です。
 岩盤区分は第二次大戦直後の復興期に初期のものが作られ,この項のものには田中(1966),テルツァギー(1946)等が知られています。
表−21 ダム基礎岩盤の分類(田中,1966)

表−22 トンネル荷重を推定するためのテルツァギーの岩盤分類(テルツァギー1946)
* トンネルの天盤は,地下水面下にあると仮定している。

トンネルが恒久的に地下水面上に位置する場合は,タイプ4〜6に対して与えた値を50%減少させてよい。

** 一般の地層の中には,頁岩層が含まれる。

 未風化の状態では,真の頁岩は,他の成層岩より性質が悪いということはない。
 しかし,頁岩という用語は,しばしば,まだ岩石の性質を獲得していない,強く圧密された粘土堆積物に用いられる。
 このような,いわゆる頁岩は,トンネル内で押し出し性,あるいは膨潤性岩石のように挙動することがある。
 
 地層が砂岩,あるいは石灰岩と十分に固結していない頁岩からなる一続きの水平層である場合,トンネル掘削時には,両側の側壁の岩盤が徐々に圧縮を受けたり,天盤の沈下を伴うのが普通である。
 さらに,いわゆる頁岩と岩石の間のすべりに対する抵抗が比較的小さいので,天盤をまたぐ位置にある上方の岩盤の支持力が非常に低下することがある。
 したがって,このような地層の場合,天盤からの圧力は,非常に塊状でシームが多い岩盤と同様に,非常に大きくなることがある。

***B:トンネルの幅,Ht:側壁の高さ
 また,これらの改良されたものとして土研式や鉄研式,電中研式の区分があります。
 改良型の区分は,岩石の硬さ,割れ目の頻度や状態,風化や変質の程度等の要素分類を行い,これ等の組合せ評価から総合的な岩盤区分を行うことを特徴としています。

1)土研式の分類
 
表−23 ダムの基礎岩盤の分類(建設省土木研究所,1966)

(a)岩盤の区分基準
区分要素 細区分 内容
岩盤の硬さ

堅硬。ハンマーで火花が出る
一部堅硬一部軟質,全体的にやや軟質ハンマーで強打して1回で割れる
軟質。ハンマーで崩せる
割れ目の間隔 T
U
V
50p以上
50〜20p
20p以下
割れ目の状態

密着
開口ぎみ。薄く粘土を挟む
開口。粘土を挟む
注)
1)ハンマーで火花が出る程度。
2)ハンマーで強打して1回で割れる程度。
3)ハンマーで崩せる程度。
4)ここでの数値は一例であり,現場条件で異なる。
5)概算1u中の面積比。
2) 鉄研式の分類

1−2.時代区分は何を表すかの表−2に示してあります。

3)電中研式の分類
表−24 分類指標の標準区分(菊池・斉藤,1975)
符号 風化状態
標準区分
岩石それ自体の硬さ 節理の分布状態
標準区分 目安 節理密度 節理の開口性標準区分 節理面の
状態標準区分
標準区分 目安
連続性のない節理の分布間隔 比較的連続性のある*節理の分布間隔
新鮮である 竪固である 岩石の乾燥一軸圧縮強度800kgf/p²以上 ほとんど分布していない 3.0m以上 10.0m以上 密着している まったく風化していない
おおむね新鮮である おおむね竪固である 岩石の乾燥一軸圧縮強度800〜400kgf/p² まばらである 0.5m〜3.0m 2.0m〜10.0m おおむね密着している やや風化伝染されている場合もある
風化している やや軟質である 岩石の乾燥一軸圧縮強度400〜200kgf/p² 分布している 0.1m〜0.5m 1.0m〜2.0m 開口している 風化,汚染され風化物質が薄く密着している
きわめて風化している 軟質である 岩石の乾燥一軸圧縮強度200kgf/p²以下 著しく分布している 0.1m以下 1.0m以下 著しく開口している きわめて風化,汚染され粘土あるいは風化物質が狭在している
*2m以上の連続性を有する。
表−25 岩盤分類と指標区分の組合せ(菊池・斉藤,1975)
注)/は「または」を表す(○/△=○または△)。*はきわめて軟質。
 また,最近ではより設計や施工に直結するように改良され,バートン(1974),ベニアフスキー(1976)によりRMRやQ値による区分が提示されていますが,極く最近になってホック(1994)はバートンやベニアフスキーの提示を吟味すると共にこれらを統合し,さらに自ら提案していた岩盤強度理論とも結び付けた非常に優れた分類基準を発表しました(GSI値による区分)。

4)ホックの分類
 
表−26  一般化したホック・ブラウンによる岩盤構造と不連続面の状態に基づいた分類,
定数mb/mi,変形係数Em,ポアソン比νの推定
(現位置変形係数Emは,式(21)で計算される。単位はMPa)
 この分類は,基本的には地質強度指数GIS値(geologikal strength index)を定義し,これにより岩級を区分しようとするものです。
 ホックはすでに岩盤の強度評価の項(第2章9項)でも述べているように,岩塊の破壊理論として,



を提示し,割れ目のある岩盤についての強度評価式は



となることを示しています。
 岩盤の区分は,この式で誘導される岩盤の強度にもとづいて行われますが,このためにはmb,S,aの値を定めなければいけません。
 ホックはバートン,ベニアウスキーの研究をもとに,おのおのが提示しているQ値,RMR値を修正することでGSI値を定めこれによってmb,S,aの値を定めることを提唱しています。



として,





さらには,これらの組合せから表-26に示される岩盤の評価と分類を行っています。
 ホックの分類のすぐれているところは,これまでの経験的なものから理論的な裏付けのあるものへと移り変わっているところであり,理論と実際の両面からの今後の期待が持てることです。

3-1.土木事業の流れと土木地質の果たす役割